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盗まれた からだとこころ
どこへゆく
宛先不明 ドブの底
どこへもゆけず ひざ抱え
遠くの声に 血を揺らす

 
夏はきらいだ、美しい思い出がひとつも無いから
馬鹿な奴も増えるし、なにより人間の肌が嫌いだ

だけど、昼前の痛い太陽から逃げるみたいに
汗をたくさん流しながら自転車を漕いで
坂を下って感じる風の中に
夏っぽい花の香りが混じっていて少し気分が良い
去年の11月に短く切られた皇帝ダリアが
また3mくらいまで伸びていたから嬉しくて
なんとなく、くだものの甘い香りを感じたら
いつも夏を待ち望む東北のきみを思い出した
去年の今頃のことが、まだ手の中に残っている

戻りたいとは思わないけれど
どうか、こころだけは返して
うるさい蝉がぜんぶ死んだら
今度は笑顔で会いに行くから
どうか、わたしのこころを捨てないで
きみを思い出すのは29度と32度
夏は大嫌いだ
夏は、大嫌い

‌終電逃して歩く夜
目線が迷子 反復ネズミ
壊れた左のポケットに
いくら詰め込んだとしても
こぼれおちゆく夢たちよ
点々 点々 転々と
それを道しるべにして
きみの家まで行くつもり
 

朝からずっと ひとりごと

なるほど そーゆーことね
おっけー だいじょうぶよ
知ってた 知ってるからさ
いらない もういらないよ
すきにして 興味ないのよ
くだらない さよならだよ

わたしがなにも知らないとでも思ってた?
「知ること」が、わたしの趣味なのですよ
「知らないふり」演じて吐く嘘、涙も枯れた

‪酩酊思考に朝の光
感傷駅で思うこと
はじめて流れる 頬の川
 

わたしたちの表現について話そうよ
あいかわらず服はださいけどもう慣れたな
センスはないけど才能はあるからさ
ところで、なしてわたしの秘密を売ったの?
ふたりの秘密と約束したのも嘘だった?

魂売ってしまったと肩を落とすきみ
背中を抱いた無言の夜に戻るのです‬
ああ!きみの涙 ぜんぶ舐めたいよ!

それはそれで、こっちはこっちでもう大変
あの子の言葉の中に本音がぽろぽろ落ちてたの
悪い子なのはお互いさまかな

思えば遠くへ来たもんだ
故郷の景色が車窓に流れ始めると、いつもそんな気持ちになる
帰省したところで会いたいひともいなければ、やりたいことも特にない
まったく知らない土地に迷い込んだみたいだ
(車窓が古臭いミニシアターで、流れる景色は退屈な昔の映画を観せられているような感覚になる)

地元の駅で鈍行列車を眺めていると、記憶の中に潜んでいる16歳のわたしが現れる
学校へ行くふりをして反対方向の電車に乗り込む、情けない猫背の後ろ姿だ
家族に嘘をつく後ろめたさは快感だけれど、それが嘘だと気付いてもらえない悲しさは未だに痛く残っている
四ツ倉駅で降りて、寂しいだけの日常から逃げたくて泣きながら海まで走った
制服のまま海水に包まれて、このまま海に還れたら…
なんてことを思ったのだけれど、きれいなシーグラスを集めてスカートのポケットに詰め込み、下校時間に合わせて誰もいない大きな家に帰る、ただのつまらないガキだ

拾ったシーグラスでピアスをたくさん作った
痛みに踠きながら、耳を針で刺して血だらけにすると、なんだか今日の嘘が許されたような気になり安心する
赤く染まってゆく湿気を帯びたピアスは、なんだか本当にきれいだった

故郷は感傷だらけ
嘘も、痛みも、あのころのままだ
おまえらにはわからないだろうな
なしてそんなに笑っているの?
忘れてないからな
そもそも誰だよ
そんなに珍しいか
まるで見世物小屋だな
つられてしまう地元訛りで、
なにを話せばいいのだろう
なにを話せば、受け入れられたのだろう
おまえは違う人間だ、きみの声が聞こえる
そんなの、生まれたときから知ってたよ

ここが世界のすべてだと錯覚するよ

それはもう、言わない約束、したのにね
さ、よ、な、ら、だけが、人生ならば
はじめから、出会わなければ、いいのにね

あしもととられて転んでしまった
ここは青森県新宿区新宿町

わたしのおうちがどこかに消えた

い、や、いや、
いやだ、ちがう、
や、いや、い、や、
ちがう、
すこし、まって、
まって、
いや、いや、い、
やだ、ちがう、
ちがう、ちが、
ち、ちが、ちが、
ち、ち、ち、ち、ち、
いや、い、い、
やだ、いやだ、
あ、あの、
あのね、
ね、あの、ね、
いや、ちがう、
ちが、ち、ち、
ち、ちが、
まって、て、すこし、
い、いや、だ、やだ、
まって、すこし、
すこし、だけ、
まって、
て、
いくから、
すぐ、に、
そこ、に、
いく、
い、
いた、いた、い、
い、いた、い、い、
いた、遺体、痛い
まって、
まっ、て、て、
ちが、
ち、血、血、
血が、
待ってて

昨夜の食器を洗う朝
ゲームもパソコンもそのまま
ちいさなためいきひとつ
眠るきみを置いて
ひとり家をでる朝7時
鍵は玄関の横
飾りはなんも無い
ただの合鍵、のようなもの
だけどそれでしあわせだった
ちいさなずるい嘘たちは
わたしが死んだら
からだと一緒に焼いてもらうから
だいじょうぶだよ
でも嘘じゃないんだよ
ふたりぼっちで灰になって
たとえば、あの秘密の場所で
拡散してひとつになろうよ
どうでもいいけど
ぞんざいに扱われるのは
慣れているから
だいじょうぶだよ
こんなもんだよ
こんなもんだよ
舐めやがって
みんなだいきらいだ
って隠れて泣いたら
抱きしめてくれた深夜1時
心底ここちよいけど
ありがとうなんて言わないよ
あいしてるなんて言えないよ
嘘ならなんだって言えるから
きみのそのこころが
持続することだけ願ってる
素直なわたしは
いつものように置き手紙
おはよう
昨夜はありがとう
珈琲淹れてあるよ
冷蔵庫にフルーツあるから
好きに食べていいよ
食べなくてもいいけど
鍵はいつものところ
合鍵だから
よければ
持ってていいよ
捨ててもいいけど
さよなら

ここが世界のすべてだと錯覚するよ
青森に捨ててきたうつくしいことば
はやく散ってさくら
はやく散ってだいきらいなさくら
はやく散ってまっくろで汚いさくら
秘密の名前を何度も呼ぶな
二文字だけでいい 二文字だけ
そう それでいい それだけでいいよ
ほかになにもいらないよ
ってのは大嘘
ぜんぶちょうだい
なにもいらないから
きみのぜんぶちょうだいよ
となりのだいじなひと捨ててさ
裏切ってさ 捨ててさ ゴミみたいにさ
得意だもんな 捨ててさ ぜんぶだよ
待っている 待っているよ
いっしょう まってる まつおんな なのです
ほんと まっぴらというか…
ほんのすこしも
ぞっとしないよ
ああ
ここが世界のすべてだと錯覚するよ
きみのかおがわからないよ
めがみえないからさ
ってのは大嘘
みえすぎちゃったから
めを潰したの
こころ焼いたの
愛していなかった
とは言っていないよ
錆びた電柱で
首でもくくれよ
首輪は好きだけど
指輪はいらないよ
そんなもんより
あんたの感情で
わたしを縛って
逃さないで
逃さないでよ
それだけでいいよ
それだけ それだけで
ほかになにもいらないよ
ってのは大嘘
ぜんぶちょうだい
なにもいらないから
きみのぜんぶちょうだいよ
地獄のかみさま
地獄のかみさま
ふたりなら
いいよ
なにも
無い
白い
雪の
冬の
冬に

終焉

個展「百年の記憶」にお越しいただきましたお客さま、本当に、心からありがとうございました

個展を振り返っても断片的にしか思い出せない
思い出すのは個展前の数ヶ月間、絵を描いていた苦しい夜だけで、本当に今回はつらかったとしか言えない

記憶や感情を題材に絵を描き続けるということは、過去の自堕落や恥だらけの時間、最悪な夜とか死ねなかった人生をひとつひとつ糸で縫い合わせていく作業を意識的に繰り返すということで、
泣き喚いて転がりまわって呻いて頭かきむしって、自分を傷つけながら絵を描き続ける意味はあるのだろうか、個展なんてする価値はあるのだろうかと、堂々巡りの地獄でした

個展期間、お客さまの優しさが身に沁みました
絵をみつめるみなさんの背中が切なくて、思わず抱きしめそうになることが多々ありました
絵をみていられないとすぐに出ていくひとや、逃げるように立ち去るひとも多く、しっかり傷つきました

自分と向き合いたいひと、抜け出せない過去があるひと、傷つきたいひと、悲しくなりたいひと、死ねなかったひと、死にたいひと、やさしいひと
わたしの絵をしっかり観てくれるお客さまは、そんなひとが多かったような気がします
大衆向けではないし、売れない絵だと理解しています
でも自己満足では無い、だけど誰かの為に描いてるわけでもない、絵と心中する覚悟で表現しています
みんな死ねと世界を恨む人生は終わって、いまは自分の中にある暗くて狭い世界で生きている過去のわたしを殺したいと願っているだけです
それが少しは伝わったかなと、ほんのちょっとだけ手応えを感じることができました

朗読「有限的展示行動」もお越しいただいたお客さま、ありがとうございました
すごいものを体感できたのではないでしょうか
音楽はテルミン奏者であり作曲家のTAKESHI YODA、身体表現は女優でダンサーの片山千穂、音響とライティングは齋藤工房の齋藤太樹でした
ものすごい才能と熱を持つひとたちで、負けられないと胃を痛めていましたが、この3人と共に戦ったからこそ表現できた世界だったと思います
去年の夏から壮絶なくらい取り掛かり、特にYODAさんとはお互いを苦しめ合う日々が続きました、一番長くわたしの詩・記憶と向き合ってくれて、わたしの記憶世界を作り上げるための音楽を産み出してくれました
3人の表現者をわたしの記憶に引き摺り込んで、悲痛に沈み、このままだと殺し合いになるのではないかと思ったこともありました、殺されなくて良かった

朗読当日、お客さまで満員のギャラリーは本当に夢のようでした
みなさんの絶望した顔、きれいな涙を流していたひと、ぜったいに、死んでも忘れないと思います
みなさんはどう思われたかわかりませんが、わたしたちは確実に獲得したものがあります
二度と同じことはできません、あの夜を目撃できたひとは幸運だと自信を持って言えます

個展でも朗読でも百年ぶんの記憶を全部吐き出しました
痛み分けしてくれて感謝しています

有限的展示行動で朗読をした壮絶な詩「百年の記憶」の一部が、いまのわたしを苦しめています

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すっかり空っぽになってしまって
なんにも無いところを彷徨い続けている
道なんて無い 光も無い
辿り着いたところで 待っている人なんていない

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まったくもっていまの状態で
それを暗示するかのような詩を書いてしまった
やっぱり過去の自分は嫌な奴で、大嫌いだ

もうからっぽです
なにもないです
白い、白い、なにもない、です

絵を描かないと

個展前のため帰省せずに新年を迎えたわけで
東京で年を越すのは初めてだなあ…なんて
ぼんやり考えながら絵を描いていたのだけれど
何年も前に一度だけ寂しい正月があったなと
ずっと忘れていたことを思い出してしまった

あのころは帰る場所が無かったので
正月は仙川に住んでた友人に会いに行って
空洞を紛らわすために酒を飲み明かすみたいな
大変くだらなくてガキっぽい過ごし方をしたけど
それはそれですごく楽しかったような気がするし
でも楽しさと引き換えに一人の帰り道は最悪で…

あの日の感情を引き戻してしまったみたいで
なんだかとても悲しくて、やるせない

助けて、は言ってはいけない呪文だから
とにかく今は絵を描かないと
ぜんぶ忘れて、忘れたいことを思い出して

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